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前遺伝子診療センター 沼部 博直
各種遺伝形式
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以下の解説は、医学部学生ならびに遺伝学の基礎を学ぼうとする専門家のためのものです。
一部に極端な一般論を記しましたが、遺伝疾患の病態は多彩であり、
決して一元化できるものではないことを予め、お断り申し上げます。
参考文献:新川詔夫・阿部京子「遺伝医学への招待」南江堂
常染色体顕性(優性)遺伝
autosomal dominant
1. 疾病遺伝子Aと正常遺伝子aとの組み合せAaでも発症する.
2. 疾病遺伝子Aと疾病遺伝子Aとの組み合せAAは重症になるか流産することが多い.
3. 患者は親・子・孫など世代から世代へと連続して存在する.
4. 患者の性比は1:1である(性別に無関係).
5. 患者と非患者の比は一般的には1:1である.
【傾向】(一般論です)
男性患者数≒女性患者数どの世代にも患者がいる。
生命予後に関しては軽症の疾患が多い。
常染色体潜性(劣性)遺伝
autosomal recessive
1. 疾病遺伝子aと疾病遺伝子aとの組み合せaaが発症する.
2. 患者の性比は1:1である(性別に無関係).
3. 疾病遺伝子aと正常遺伝子Aとの組み合せAaは患者ではないが,保因者と呼ばれる.
4. 患者は兄弟・姉妹の中で発生することがあり,一般的に親・子孫・血縁者に患者はいない.
5. 患者の親は共にAaの組み合せの遺伝子を持つ保因者である.
6. 両親は血族結婚のことが多い.(血族結婚は家系図では通常の婚姻の[-]記号ではなく[=]記号で表わす
7. 患者と非患者の比は1:3である.
保因者:正常=
1:1
保因者:正常=
1:1
患者:保因者:正常=
1:2:1
罹患親と保因者との婚姻も理論上は有り得るが,実際には生殖年齢までの生存が困難であるため,ここでは,表示を省略した.
同様にAR-1の罹患親と正常親との婚姻も実際には成立しにくい.
罹患親と保因者との婚姻も理論上は有り得るが,実際には生殖年齢までの生存が困難であるため,ここでは,表示を省略した.
同様にAR-1の罹患親と正常親との婚姻も実際には成立しにくい.
X連鎖潜性(劣性)遺伝
X-linked recessive
1. 疾病遺伝子はX染色体上にある.
2. 疾病遺伝子Xaを1本だけ持つ男性XaYが発病する.
3. 疾病遺伝子Xaと正常遺伝子XAとの組み合せを持つ女性XAXaは原則的に無症状であり,保因者である.
4. 疾病遺伝子Xaと疾病遺伝子Xaとの組み合せを持つ女性XaXaがまれに存在し,発病する.
5. 患者男性XaYの娘は,患者男性の妻がXAXaの保因者でない限り全てXAXaの保因者となり,この保因者 を通じて男孫の半分が罹患する.
 即ち,1世代おきに男性が発病する.
 子が女XXである限り,患者男性のYは伝わらず,Xaのみが伝わるため.
6. 患者男性XaYの息子は,患者男性の妻がXaXAの保因者でない限り全て正常である.
 即ち,男性から男性への疾病遺伝子の伝達はない.
 子が男XYである限り,患者男性のXaは伝わらず,Yのみが伝わるため.
7. 女性保因者XAXaは,時に軽度の症状を示すことがある.
保因者:正常=
1:1
保因者:正常=
1:1
患者:保因者:正常=
1:2:1
実際には左記に示す,保因者女性(自分の父が患者)の女性と罹患患者との間での婚姻はごく稀れである.
【傾向】(一般論です)
原則として男性のみどの世代にも患者がいる、骨・神経系統疾患が多い
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